季節のお手入れ

≪栽培一ロメモ その1≫ ランと朝の日照の大切さ

 植物は葉緑体で空中の2酸化炭素を吸収固定し、光のエネルギーを得て分解し重合して糖類に変えて植物体を作るという行程を繰り返してその体を生長させています。2酸化炭素の吸収には呼吸作用で大量の空気を出し入れをするので、同時に大切な水分を失うことになります。植物にとって水分を失うことは好ましいことではありません。この損失を防ぐために植物はさまざまな工夫を凝らしています。ランの一部、例えぱカトレヤやレリアはその代表的な例ですが、これらは夜は気孔を全開にして2酸化炭素を吸収して光合成の中間物質であるリンゴ酸を主体とした有機酸を生成して貯え、朝を待ちます。夜が明けると気孔を閉じて呼吸作用を抑え、待ち兼ねた日光を受けて光化学反応の後半を開始し炭素固定反応をして光合成を完成します。このことはそれら一部のランに限らず多くの科にわたる植物に見られ、これらはCAM植物と呼ぱれています。CAMとはcrassu-1acen acid metabo1ism(ベンケイソウ型酸代謝)の頭文字をとったもので、概して多肉質の葉を持つ植物に見られます。

 上記のようなわけでカム植物に該当するランにとって、朝の日照はこの上なく大切なもので、たとえ等量であっても午後の日照とは比較にならない効果が得られるものと思ってください。かってのラン栽培の大先達であった故三浦二郎一さんは朝の日照を第一条件として神奈川県央各地を調べてミウラメリクロンの立地を決められました。朝の日照はそれほど大切なことなのです。

 ランの栽培書には日照について強光だの弱光だのとランの受光量の程度を指示していますが、照射時刻による効果の違いについても説いて欲しいと思います。

 日照は温室の立地上自由度が得られないものではありますが、日照の時刻による効果に対する認識は常に持って、少しでも朝によく日光があたるように工夫を凝らすのもランの楽しみの一つでしよう。

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