季節のお手入れ

バンダ類の栽培

バンダ類と一口に言っても人によりその範囲のイメージが異なります。狭い意味ではバンダ属であり、広い表現では単茎性のランをひっくるめたイメージの人もいると思われます。ここではバンダ属を中心に、アスコセントラム属、エリデス属、リンコスティリス属、レナンセラ属、およびそれらの交配属を対象にした栽培の説明です。

これらのランの自生地はフィリピンを中心とした東南アジアですので高温多湿の環境で育っています。光線を十分に当てることで一年中成長し多彩な花を咲かせています。この自生地の気候環境を日本で再現させるのは大変難しいことです。夏の日本の気候は気温が高すぎるときもありますがバンダ類にとってはほぼ満足できます。しかし、冬には温度、湿度を保つために温室が必要になります。

光線:夏、外で棚に吊るして栽培する場合には25~50%の遮光が必要です。冬、温室内では特に遮光は必要ありません。日照時間も短いですからなるべく光に当てる工夫をしてください。

温度:冬季の最低温度は18℃、できれば20℃以上を保ちたいものです。18℃しか維持できない場合は何とか生きて冬をやり過ごす感じです。ですから当然成長は期待できませんし、水遣りは控えて湿度を高く保つようにします。最低温度が20℃以上であればエリデス属やバンダ属のセルレアは根を伸ばし成長します。春先から9月一杯は成長に最適の時期ですからそれに見合った水遣りや施肥が必要です。また、暑過ぎるのは生育にはマイナスです。日中35℃、夜間は30℃を超えないような工夫が必要です。

水遣り:根はむき出しのままで、根の周りに水分を保つものがありません。成長している夏場には頻繁に水遣りが必要です。

湿度:80%以上の湿度が必要です。特に冬場温室内は加温することで湿度が低下しやすくなります。加湿器を設置したり、床面に水をまくなどの工夫が必要です。

施肥:夏、液肥を週に一回施す。秋口から燐酸肥料を多めに月一回程度施す。

植替え:春先根が動き始めてから行う。

■ 冬場の手入れ
最低温度が18~20℃の場合には根が伸びているのはエリデス属とバンダのセルレアくらいだと思います。バンダ類の成長を期待できる温度ではありません。何とか冬場を生き延びて春以降の成長の季節が来るまで耐える時期です。水をやった後葉の中心に水が溜まった状態で夜になり、温度が低くなると成長点が腐ることがあります。また、加温しますと湿度が極端に低下します。湿度を高める工夫をしてください。
一方最低温度が20~24℃を保てて、湿度も80%以上あれば冬でも成長を続けることができます。なるべく日当たりの良い所に置きましょう。

■ 春先から梅雨にかけての手入れ
  5月に入りますと日照時間も長くなり夜間の温度も高く保てるようになります。まず根が成長を始め続いて中心から新しい葉が伸び始めます。また、成長にはブレーキが掛かりますが、花の咲く株も沢山出てきます。これらの変化に対応した手入れが必要になってきます。

1.天気が良いと天窓の開閉だけでは調整できないほど高温になり、温室内が蒸れる事があります。横窓の開放や内張り・外張りの撤去、代わりに遮光ネット張り等の対応が必要です。
2.成長の始まりですから、それなりに施肥が必要です。私は潅水時に2000~5000倍の液肥をやっています
3.5月の光線には遮光ネットは必要ですが、梅雨の時期には遮光ネットは不要です。
4.夜間の最低温度が20℃以上になれば、温室の外に出して梅雨の雨に当てるほうがよいと思います。梅雨に当てると根の成長が驚くほど違います。
5.5月に入りますとセルレアは温室の外に出していますが、他のサンデリアナ系のバンダは温室の中です。 でも梅雨時の雨には当てたいものです。

■ 梅雨明けから秋口までの注意点
  7月の梅雨の時期が終わりますと、一番のポイントは気温です。気温が高すぎなければバンダの生育にとって最高の季節ですが、30度を超す気温はバンダ属の仲間にとってもベストの環境ではありません。関東以南の地域では気温を下げる工夫が必要です。また、台風による被害も少なくありません。

1. 太陽の光は生育に必要ですが同時に葉面の温度も高くなります。それを押さえ葉焼けを防ぐために遮光が必要です。50%遮光すれば葉焼けはありません。その株がある程度強光線に慣れてきたら30%遮光でもよいかもしれません。
2. 水遣りの回数を増やし、気化熱で温度を下げる。私は8時、15時、19時を目安に散水していますが葉の中心部に溜まった水が蒸散しないまま高温になりますと成長点がだめになってしまいます。13時前後の散水は控えたほうが良いでしょう。
3. 台風や強風が吹きますと吊るした株同士のこすれあいで根や葉が被害を受けます。揺れてぶつかり合わないように株を固定するか、温室の中に一時避難します。
4. 生長の時期ですから薄い液肥を毎日でも散水してください。

■ 秋口から冬場にかけての栽培
9月末になりますと台風の接近も気掛かりですが、一番の関心事は「ランを温室に取り込むタイミング」ではないでしょうか。
皆さんそれぞれ目安のタイミングをお持ちだと思いますが、私のタイミングは10月に入ってから、最低気温が18度以下の日が数日続く天気予報を目安にしています。 18度以下の予報が出たらまず、バンダのサンデリアナ系統やリンコスティリス属を最初に温室に取り込みます。
順次高温性と思われる種から温室に吊るしていきます。 最後のバンダ セルレアを温室に入れるのは11月に入ってからになります。
この時花芽が出ているセルレアを温室に入れると環境の変化で花芽は枯れてしまいますし、外に置いたままですと花芽の伸びは遅く、気温はどんどん下がっていきます。なかなか判断が難しいです。

その他この時期の注意点を上げます。
1.暖房機器の作動確認、設定温度の確認、遮光ネットの取り外し、外張り・内張り作業などランを取り込む前に行うと作業が楽です。
2. 温室に取り込む前に温室の掃除をしておきます。ガラス面の汚れや苔を拭き取る。床面から枯葉や雑草を取り除きナメクジの住処を少なくします。ベンチの苔や汚れを拭き取っておきます。特にガラス面をきれいにしておくと光線量を増やすことができます。また、温室の外回りも雑草を取って清潔にしておきます。
3. ランをほぼ取り込んだら、温室内全体を一度殺虫および殺菌をしておくと良いでしょう。スリップスなどもランと一緒に取り込んだ可能性があります。これから咲く花がスリップスのお陰で台無しになってしわないように。
4.温室に取り込んで窓を閉め切ってしまいますと、晴天時には天窓だけの開閉では調整できず簡単に35度を超えてしまいます。また温室内の湿度は大陸生まれの乾燥した高気圧の外気より遥かに高くなります。

参考資料 1:この時期の月毎の最低温度の平均値(1992~2000)
(気象庁過去のデータ検索 http://www.data.jma.go.jp/obd/)

月最低温度
辻堂 三浦
9月 20.6℃ 20.4 ℃
10月 15.1℃ ? 15.0
11月 9.4℃ 9.4 ℃
12月 4.2℃ 5.4 ℃

ページTOPへ